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<<   作成日時 : 2017/07/18 13:29   >>

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人間の中心

小学生のサッカーのコーチをしていた時のこと、子供に「ボールの中心を見て蹴るんだぞ」とボールの真ん中を指さして説明したところ、ある子が
「人間のちんこだな」とふざけて言った。
一瞬、自分は「あれ?人間の中心はちんこだろうか?」と思った。
すると、別の子供が、
「人間のへそかな?」と言った。
自分は、どちらが人間の体の中心なのか、即答出来なかった。
人間の中心はちんこかもしれないし、へそかもしれないし、どちらだろうか?と真面目に考えたが、結局分からなかった。

ある日、私は床屋へ行った。
そこは、私が中学校まで時々通っていたが、その後高校に上がってからは、別の美容院などに行くようになり、以来とんと行っていなかった床屋だった。
その後もたまにその床屋の前を通り過ぎることがあったが、あまり気にかけないでいた。しかし、様々な思いにより、いつも通っている美容院ではないところへ行きたい気持ちになり、その床屋へ今年になって入ってみた。

ご夫婦はだいぶお年を召されていたが、口数の少ないご主人はそれがかえってよい雰囲気を醸しだしていた。
私が中学の頃よく兄弟で来ていたことをご夫婦に話したが、ほとんど忘れてしまったようだった。
店は創業52年だそうで、ご主人は88歳で未だ現役である。まさしく、はさみ一つで仕事を続けて来た職人といえる。

自分はなんでか分からないが、職人的な老人に心惹かれる。
人間国宝などは最も大好きで、その人達につけられる「レジェンド」「神」などの言葉をもっともだと思う。
ついでにいうと、NHKのプロフェッショナル、仕事の流儀などの番組も大好きである。彼らの技術なり仕事ぶりなどに垣間みることのできる、意外と淡々とした仕事ぶりというものが私の心を魅了し、落ち着かせ、私自身の人生の励みともなりうる。

そう、それで、その床屋の入口に順番を待つためのソファとテーブルがあり、そのテーブルの上に何冊かの本が立てて置いてあった。どれも手あかのついた古めの本である。その中の一冊に「あゝ玉杯に花うけて 佐藤紅緑」という本を見つけ、手に取って開いてみた。

佐藤紅緑は、作家佐藤愛子の父上である。この作品は少年向けに書かれた小説で、昭和初期に発行されている。
小説の主人公はとうふ屋の息子で、小学校時代は優秀だったが、家の事情で中学校へ上がれずに働いている。彼は「ちび公」とあだ名をつけられ、よくいじめっ子につかまり、売り物の豆腐をただで食われてしまう。
いじめられてばかりの主人公はある時から、黙々先生という個人の営む塾へ通い、そこで勉強を学び始める。そして高校へ入学するための検定を受けることをめざすようになる。

その黙々先生という先生はかわりもので、先生と生徒の間に次のようなやりとりがある。
主人公の先輩の安場という生徒は、若くて力には自信があったが、ある時やせた先生と腕相撲をしたところ、先生の方が勝ってしまった。
(以下本文抜粋)

「おまえはどこに力を入れてるか」
「ひじです」
「腕をだしてみい」
 先生のひょろひょろした青ざめた腕とおれのハチ切れそうに肥った円い赤い腕が並んだ。
「ひじとひじの力なら私の方がとてもかなわないはずじゃないか」と先生がいった。
「じゃ先生は?」
 先生はにっこり笑って、胸の下を指さした。
「腹ですか?」
「うむ、力はすべて腹からでるものだ、西洋人の力は小手先からでる、東洋人の力は腹からでる。日露戦争に勝つゆえんだ」
「うむ」
「学問も腹だ、人生に処する道も腹だ、気が逆上すると力が逆上して浮きたつ、だから弱くなる、腹をしっかりと落ち着けると気が臍下丹田(えきかたんでん)に収まるから精神壮快、力が全身的になる、中心が腹にできる、いいかおまえはへそをなんと思うか?」
「よけいなものだと思います」
「それだからいかん、人間の身体のうちで一番大切なものはへそだよ」
「しかし何の役にも立ちません」
「そうじゃない、いまのやつらはへそを軽蔑するからみな軽佻浮薄(けいちょうふはく)なのだ、へそは力の中心点だ、人間は全ての力をへそに集注すれば、どっしりとおちついて、威武も屈するあたわず富貴も淫するあたわず、沈毅(ちんき)、剛勇(ごうゆう)、冷静、明智(みょうち)となるのだ、孟子のいわゆる浩然(こうぜん)の気はへそを賛美したことばだ、へそだ、へそだ、へそだ、お前は試験場で頭がぐらぐらしたらふところから手を入れて静かにへそをなでろ」


この文章を読んで、冒頭に私が挙げた、人間の中心はへそかちんこか?の疑問ははっきりと氷解したのである!





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